2016年10月27日木曜日

妊婦と仕事

最近山に行く取材が増えてきた。

林業事業体の取材で東京の山林へ取材に行ったとき、写真を撮るために断崖絶壁を登らなければいけない場面があった。ちょっと怖かったけど、意を決して登ってみると、石が崩れてズルッと滑った。危ない、と思ってとっさに踏ん張ると、何とか持ちこたえることができたが、ズキンと腹痛が出てきてしまった。結果、きこり社の繁田にバトンタッチして写真を撮ってもらうことに。さすがにこれ以上登れなかった。
その後も東京をひたすら歩かなければならず、腹痛は収まってくれなかった。ホテルに着いたとき、水っぽいものが沢山出てるのに気付いた。

心臓がドクンとした。
もし破水してたら…不安に押しつぶされそうだった。それ以上に疲れ切ってしまい、敷かれていた布団でそのまま寝てしまったようだ。

翌日、助産師さんに電話してみた。明るい声で「大丈夫だよー。それはおりものだと思う。子宮ってね、膨らむ前の風船みたいな感じでとても強いのよ。」と言ってくれた。肩の力がスーッとぬけて行った。

「でも、あんまり無理しないでね。そういう仕事は誰かに代わってもらって。」
無理するのはやめよう、と思った。最近無理しすぎていたので、赤ちゃんからのサインだったのかもしれない。ごめんね。これからは赤ちゃんと相談しながら仕事を進めていこう。

それでも心配だったので、1回目の定期健診を受けながら診てもらうことに。定期検診は助産院では受けられず、渡辺助産院からの紹介で古川レディースクリニックへ行くことにした。裕さんも一緒に来てくれた。待合室の飲み物が充実していて嬉しい。
エコー写真は見てほしいけど、内診室に一緒に入るのは少し恥ずかしかった。
「元気ですね。」
先生はエコー写真を見ながら単刀直入に一言。よかったぁ。もうダメかもしれないとも思っていたので、本当に安心した。
先生に今までの事情を話すと、「そんなに無理ばっかしてると本当に流産するよ。」
と言われてしまった。人生の内でたった10ヶ月。赤ちゃんのことをもっと考えなきゃと反省した。エコー写真にはもう手・足・頭らしいものが映っている。「こんなに大きくなったんだねー!」と裕さん。生命の力ってすごいなーと感じる。現在9週目。まだまだ先は長い。

順調ということで、安心して明後日の結婚式を迎えられそうだ。






2016年10月7日金曜日

心拍確認

10月7日、助産院で出産を希望する私は、行きつけのレストランで聞いた渡辺助産院へ行ってみることにした。
今日は裕さんも一緒。渡辺助産院は偶然にも裕さんの実家の近くだった。

すごくアットホームな助産院で、やさしそうな助産師さんが笑顔で迎えてくれた。エコーをとると、「あ、よかったね、心拍が確認できましたよ。」とモニターを見せてくれた。またうるっと来てしまった。画面に映る黒い羊水の中で、ハンバーガーみたいにパクパク動いているものがあった。どうやらこれが心臓のようだ。

「仕事をやり過ぎてて、心配なんですけど。」と裕さん。やっぱり心配していたよう。
助産師さんは「体が大変じゃなかったら、今までのようにやっても大丈夫だよ。」と言ってくれた。これから仕事が忙しくなるので、その言葉にひと安心。めでたく母子手帳も受け取って、本格的な妊娠生活が始まる。

つわりはまだあまり感じないけど、朝全然起きられない日々が続いている。「がんばらなくて大丈夫だよ。休むのが仕事なんだから。」と裕さんはやさしい。
お言葉に甘えて、お弁当を作るのをお休みすることにした。

予定日は5月30日に。生理から数えると5月22日なのだけれど、今のサイズからだと6月3日とエコー写真に出ている。「予定日から1~2週間前後するのはあたりまえなのよ。」と助産師さんは言う。予定日ってそんな曖昧なものなんだなと思いつつ、裕さんの誕生日のちょうど半年後ということで、「5月30日にしよう。」と裕さんが決定した。
まだまだ先だと思うけれど、きっと生まれてしまったらこの10ヶ月なんて短いに違いない。授かった赤ちゃんとお腹の中で一緒にいる時間を大切にしたいと感じる。



2016年10月4日火曜日

願い事

10月4日は毎年恒例の横沢神楽のお祭りの日。今日も昔の舞作戦で何とか役目を果たした。

掲示板を見ると、今年の1月のお祭りの時に書いた絵馬がまだ飾られていた。
その絵馬をのぞくと・・・

「元気な赤ちゃんが生まれますように」

赤ちゃんのことを神様にお願いしていた。
すっかり忘れていた。
神様に捧げる舞を通して、もしかしたら、神様が聞いてくれたのかもしれない。
そんなことをふと思った。




2016年10月2日日曜日

大神楽祭

玉川の横沢集落には、横沢神楽という玉川に唯一残るお神楽がある。
神秘的でありながら、ほのぼのとしていて親しみやすい。一方で、十数世帯しかなく、おじいちゃんおばあちゃんが大半の横沢集落には、担い手が少なく、後継者不足に悩んでいる。そんな事情もあって、私は数年前から横沢神楽のお手伝いをしている。

神楽舞殿で神様に捧げる舞を舞うことは、神様とつながっているような感覚を受け、心静かで神聖な気持ちになる。

今年の10月、静岡市が主催する大神楽祭が静岡浅間神社で行われることになった。静岡市の山間部「オクシズ」の神楽が結集する初のお祭りで、横沢神楽もそれに参加した。

徳川家康と深い関わりがある静岡浅間神社の木造の舞殿は荘厳で趣がある。そこで行われる稚児舞を何度か取材したこともあり、私にとっては美しいものを見上げる場所だった。そんな由緒ある憧れの舞殿で舞えることは、思いもよらない、とても嬉しいことだった。

旦那さんに相談すると、「お腹にいる時に浅間神社で舞うなんて縁起がいいから舞ってきなよ。」と言ってくれた。

私が担当する「おおりん舞」はずっとスクワットをしているような動きの激しい舞。妊婦がそんな激しい動きをして大丈夫か心配で、リーダーの江川進さんに相談すると、「できるようにやってくれればいいよ。」と言ってくれた。
ちょうどその頃、何十年か前に舞われた神楽のDVDを見る機会があった。昔の「おおりん舞」は今と違って、実はそんなに激しい舞ではない。急遽、昔の舞い方を練習し、出演することにした。

本番、本殿から橋を渡って舞殿へ。右手には扇、左手には鈴を持ち、太鼓と笛の音に合わせて舞う。舞っている最中、込み上げてくるものがあった。あの舞殿でお腹の赤ちゃんと一緒に舞えたことは、本当に嬉しいことだった。
妊娠が分かった時、仕事の関係でまだ早いのでは、と思ってしまったけれど、玉川きこり社のみんなも協力してくれ、こんな素晴らしい機会もいただいて、本当はすごく良いタイミングで来てくれたんじゃないかと思えるようになった。

大好きなパン屋の奥さんが、「本当に良いタイミングで来てくれたわね!」と言ってくれたことも背中を押してくれている。

そんなこんなで、ようやく赤ちゃんと向き合えそうだ。