2016年10月2日日曜日

大神楽祭

玉川の横沢集落には、横沢神楽という玉川に唯一残るお神楽がある。
神秘的でありながら、ほのぼのとしていて親しみやすい。一方で、十数世帯しかなく、おじいちゃんおばあちゃんが大半の横沢集落には、担い手が少なく、後継者不足に悩んでいる。そんな事情もあって、私は数年前から横沢神楽のお手伝いをしている。

神楽舞殿で神様に捧げる舞を舞うことは、神様とつながっているような感覚を受け、心静かで神聖な気持ちになる。

今年の10月、静岡市が主催する大神楽祭が静岡浅間神社で行われることになった。静岡市の山間部「オクシズ」の神楽が結集する初のお祭りで、横沢神楽もそれに参加した。

徳川家康と深い関わりがある静岡浅間神社の木造の舞殿は荘厳で趣がある。そこで行われる稚児舞を何度か取材したこともあり、私にとっては美しいものを見上げる場所だった。そんな由緒ある憧れの舞殿で舞えることは、思いもよらない、とても嬉しいことだった。

旦那さんに相談すると、「お腹にいる時に浅間神社で舞うなんて縁起がいいから舞ってきなよ。」と言ってくれた。

私が担当する「おおりん舞」はずっとスクワットをしているような動きの激しい舞。妊婦がそんな激しい動きをして大丈夫か心配で、リーダーの江川進さんに相談すると、「できるようにやってくれればいいよ。」と言ってくれた。
ちょうどその頃、何十年か前に舞われた神楽のDVDを見る機会があった。昔の「おおりん舞」は今と違って、実はそんなに激しい舞ではない。急遽、昔の舞い方を練習し、出演することにした。

本番、本殿から橋を渡って舞殿へ。右手には扇、左手には鈴を持ち、太鼓と笛の音に合わせて舞う。舞っている最中、込み上げてくるものがあった。あの舞殿でお腹の赤ちゃんと一緒に舞えたことは、本当に嬉しいことだった。
妊娠が分かった時、仕事の関係でまだ早いのでは、と思ってしまったけれど、玉川きこり社のみんなも協力してくれ、こんな素晴らしい機会もいただいて、本当はすごく良いタイミングで来てくれたんじゃないかと思えるようになった。

大好きなパン屋の奥さんが、「本当に良いタイミングで来てくれたわね!」と言ってくれたことも背中を押してくれている。

そんなこんなで、ようやく赤ちゃんと向き合えそうだ。